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愛知県のほぼ中央に位置する三好町。緑豊かな自然環境に恵まれ、名古屋市と豊田市の中間にある利便性の高い地域として、急速に宅地化が進んでいる。平成14年に人口5万人に達した後も、「日本一人口の多い町」として発展を続け、平成17年の国勢調査では人口の伸び率が18.0%と愛知県で第1位、全国の市町村の中でも第5位となった。平成21年以降の早期に市制へと移行する計画も進むなど、躍進を続けている。
自治体向け統合型GISは、地図データを一元的に管理し各部署で共有する、庁内横断的なシステムだ。平成12年度の「GISモデル地区実証実験」を皮切りに、統合型GISの整備・活用を推進する政府の取り組みが活発化。あらゆる自治体にとって統合型GISの整備の必要性が高まる一方にある。
そうした状況を先取りし、三好町では早くから統合型GISの導入を目指す動きが始まっていた。都市計画課課長の細野氏は、「国の施策が本格化する以前から、今後の自治体業務にとって統合型GISが不可欠な基盤となることを確信していました」と振り返る。そうした思いを培ったのは、実際に統合型GISの利便性を目の当たりにしたときの新鮮な驚きだった。都市計画課課長補佐の宇野氏はこう語る。「先進的な取り組みをしていた近隣自治体で、初めてGISを見たときの衝撃は忘れられません。パソコン上で街路の線を一本引くだけで、街路にかかる土地所有者の情報などを即座にチェックできるのです。地図情報をベースに業務効率を飛躍的に向上させるこのツールは、住民サービスの迅速化や業務のスリム化のために欠かせないと直感しましたね」。
さっそく宇野氏らは統合型GISの導入を目指し、平成12年度、予算要求を開始した。自治体における統合型GISの導入事例がまだ少ない中、すぐにはゴーサインが得られなかったが、粘り強く必要性を訴え続け、4年目にようやく予算を獲得。平成16年度、統合型GISの導入を目的としたプロジェクトチームが立ち上がり、さらに4年という歳月をかけて、平成20年の本稼動にいたるまでの道のりを慎重に歩んでいった。「当初、統合型GISは『なくても仕事はできる』緊急性の低いシステムと受け止められましたが、実際に導入した今では、なくては仕事にならないシステムだということを多くの職員が肌身で感じてくれたと思います」と、宇野氏は語る。
「住民サービスの向上こそが、私たちの使命です。基本構想の立案から実際の導入にいたるまでの全プロセスを通して、そのことは、つねにプロジェクトの根幹として強く意識していました」と、細野氏は語る。
大都市への通勤利便性や住環境の良さに人気が集まる三好町では、急激な人口拡大への対応が課題だった。各種問合せ対応などが多忙を極め、業務の迅速化・効率化が急務となっていた。自治体業務において使用頻度の高いものの一つが地図だが、固定資産や下水道管理などの担当部署で個別にGISが導入されていた他は、地図の電子化は進んでいなかった。
統合型GISを導入し、既存の個別GISが保有する地図データを全庁で共有すれば、住民に対するワンストップサービスを実現し、個別にデータやシステムを整備するコストも削減できる。昨今、意識の高まる防災対策にも役立つだろう。そうした目標をかなえるために求めたものは、全職員が使いこなせるシステムだった。「住民からの多彩なニーズに応えるためには、全員が簡単に利用できるツールでなければ、意味がありませんから」。
操作性の高いシステムこそが住民サービスを向上させる。
信念に裏打ちされた慎重な取り組み姿勢が成功の鍵。
成功の鍵は、最良のシステムを見極める努力を惜しまなかったことにあるようだ。プロジェクトチームの中心メンバーの一人、当時都市計画課、現在管財課主査の近藤氏は当時を振り返ってこう語る。「統合型GISの利便性は理解していたものの、機能を逐一把握していたわけではありません。そこで、平成17年度から平成19年度上期にかけて、ある測量会社に統合型GIS基本計画を委託し、試験的に導入した統合型GISを実際に使用しながら、具体的な活用法を検証することにしたのです」。
住民サービスに活用するためにはどういった機能が必要か、庁内の全職員が気軽に使うためにはどのような条件が求められるか。システムに求める要件を明確化するために、2年半にわたる試用期間中は、全庁から現場の職員の声を拾い集めてはプロジェクト会議に持ち帰り、検討を重ねることを繰り返したという。こうして必要な機能を一つひとつ洗い出し、いよいよ平成19年度の夏、本稼動用の統合型GISを選ぶためにシステムの提案コンペを行うこととなった。
提案コンペに参加した8社に上る候補の中から、最終的に三好町がパートナーとして選んだのがNECだ。その理由は、製品の機能面をはじめ、プロジェクトの推進体制、実績、サポート体制、適正な価格水準など、あらゆる面で他社に勝る総合力だったという。「プロ版・ライト版という2種類の画面が用意されており、GISの利用経験が少ない職員もシステムに関する知識が豊富な職員も全員が快適に利用できる点は、まさに私たちの要望通りでした。そのほか、自社でGISエンジンを開発していることや豊富な実績に対する信頼感、地元に拠点を構えている安心感、将来的な拡張性の高さ、導入後1カ月間の庁内常駐ヘルプデスクや、各業務における具体的な活用法についての巡回相談などの充実したサポート体制も魅力でした」。理想のシステムを求めて努力を重ねてきた日々が、とうとう満足できるパートナーとの出会いという形となって結実したのだ。
プロジェクトメンバーは、都市計画課を中心に、道路下水道課をはじめとする建設系部署、税務課、福祉課、防災安全課などの、多彩な部署から集まった。「全庁から幅広くメンバーを集めたおかげで、さまざまな部署の要望をきめ細かく拾うことができました。ただ、私自身を含め、システムについては素人の集まりなので、苦労が絶えませんでしたが」と、近藤氏は苦笑する。プロジェクトチームの活動は、耳慣れないシステム用語と格闘するところからスタートした。情報システム課の協力を得ながら、なんとかして噛み砕いて理解し、内容について周知を図るだけでも一苦労。さらに、自治体業務にとって非常に重要な位置を占めるセキュリティ対策についても検討しなくてはならない。その道のりは、苦労の連続だったという。
最大の難所は、システムの提案コンペを控え、各ベンダーに本稼動用システムの提案依頼をする仕様書の作成だった。「メンバーからは実に多くの要望が寄せられましたが、その中から仕様書に載せるべき内容を厳選し、町としての要件にまとめあげていく作業は、本当に大変でした。しかし、全庁が一丸となって汗を流した分、良い結果を得られたと思います」。
システムの導入成果は狙い通りに現れたという。都市計画課主事の芳村氏は、満足気にこう語る。「ボタン一つで操作できるので分かりやすい上に、必要な箇所を自由に拡大できて見やすいと年配の職員からも好評です」。また、同氏は、各課が管理するさまざまな情報を簡単に地図に取り込める「アドレスマッチング機能」の便利さも強調する。「市街化区域中の農地を洗い出していますが、税務課がExcelで管理する住所地データをすぐに地図上にプロットできて、業務効率が格段に上がりました」。
最大の目的である、住民サービスの向上も実現されている。「他部署に足を運ばなくとも、自分のデスクで必要な情報を入手できるため、住民からの問合せにすばやく応えられますし、苦情対応などで現場へ出る際にも、その場所に関わる法規制や地籍などの情報が一目で分かるため、現場についての予習を素早く済ませ、住民を待たせずに即座に対応できるといった効果が、相次いで報告されています」。
プロジェクトチームは、システムが稼動を始めた今も解散していないという。その理由は、活用場面で現れた新たな課題を吸い上げ、より良いシステムへと成長させていくためだ。導入から半年余りを経た今は、全部署の職員に向けて、実際の使用感や要望などについて第1回目のアンケートをとる準備を進めている。「全庁の職員にとって使い勝手の良いシステムこそが、住民サービスの向上につながります。そのために、現場の声に耳を傾け、きめ細かくシステムに反映させていきたいと考えています」と都市計画課技師の枅川氏は決意のほどを語った。
将来的には、住民の生活利便性の向上や災害対策への貢献などを目的に、住民公開型GISへの展開も構想中だという三好町。住民重視の志を実現するシステムを求めて、ひたむきな研鑽は重ね続けられるだろう。